いよいよ刑務所
■ 刑務所の塀の中へ
高さ5mもあるかと思われる鉄製の門がゆっくり開き、窓を格子で覆われたグレーの護送バスが塀の中に吸い込まれていった。
これから約3年間私はここで生活することになる。
ここは、A級短期(初犯8年以下)とM級(精神障害)受刑者の服役施設・○○医療刑務所である。
A級 | 初入者で執行刑期が8年未満の者を収容する刑務所 |
LA級 | 初入者で執行刑期が8年以上の者を収容する刑務所 |
B級 | 主に再入者で執行刑期が8年未満の者を収容する刑務所 |
LB級 | 主に再入者で執行刑期が8年以上の者を収容する刑務所 |
M級 | 精神障害者を収容する刑務所 |
P級 | 病気の者を収容する刑務所 |
女子 | 女子のA級・B級・L級の被収容者を混禁している刑務所 |
F級 | 外国人を収容する刑務所 |
刑務所のなかでは優遇されているという噂のある刑務所で、累犯や暴力団関係者は入所できない。
楽に過ごせれば良いがと思っていたが淡い希望はすぐに打ち砕かれた。
■ 身体検査と私物検査
またまた全裸になってケツの穴を開いてみせなければならない。
何度やっても屈辱的で慣れない。
入所時の写真を受刑者番号プレートを持って撮影、指紋と掌紋を登録。
「称呼番号」という刑務所で何をするにも必要な番号を与えられる。
いきなり怒鳴られた!
名前を呼ばれたときに少し返事の声が小さかったからだ。
これまで嫌な思いは色々あったものの、怒鳴られたことはなかった。
本格的に受刑生活に入ったんだなと感じた。
私物検査は全ての持ち込んだ私物をゴザに広げてチェック。
収監に備えて購入してきた新品の下着は全て持ち込めず、前刑務所で購入したもののみ可能だった。
拘置所のくだりで書いたが、ヒートテックなどの特殊な下着類は必ず未決のうちに差し入れしてもらっていないと刑務所で使用することができない。
他に持ち込めるのは、めがねと書籍、前の刑務所や拘置所で購入した筆記具、電気カミソリ、タオル、日用品だけだ。
コルセットなどの医療器具は別途医務の許可を取らなければならない。
■ 舎房へ
前の刑務所から一緒にここへ移送されたのは5人だった。
新入の調査専用の舎房に一緒にはいることになった。
舎房は6帖に二段ベッド、大きなステンレスの流しとトイレが付いた6人部屋。
築5年の新しい舎房だった。
今までの施設が築5~60年たったボロボロの舎房だったのでそれだけでも気分がいい。
この刑務所は全ての建物が新しく、雑居房は6人部屋と3人部屋の2種類でほとんどは独居房だった。
入所した当初6ヶ月ほど慣れるまではみな雑居だが、その後は独居となる。
調査期間は2週間でその間室内作業をしながら動作訓練と教育を受け配役を待つことになる。
■ 動作訓練と新入教育
動作訓練は運動の時間に行われる。
前の刑務所でも受けているので楽勝かと思っていたがとんでもなかった。
号令のかけ方から細々したところが全く違うのだ。
しかも前にまして厳しい。
とにかく始めの一週間はみな怒鳴られまくりだった。
初犯刑務所は厳しいという話は本当だなと実感した。
新入教育は、刑務所での心得など基本的なことや教育用DVDをみせられた。
他に分類担当の面接があり配役や個人目標を設定する参考にするようだ。
■ 同室の二人が懲罰
入所して4~5日経ったある日の朝食の時に事件は起こった。
40代のKが若い20代のYに飯をわけてやったのを刑務官に見られたのだ。
刑務官は通路側の窓の横に隠れてずっと覗いていたらしい。
刑務所では食事のやり取りは厳禁で懲罰の対象となる。
二人は荷物を全て持って、取調べ房に移った。
その後本人達も勿論だが、残った3人も取り調べを受けることになった。
本人が認めているのかどうか判らなかったので、「知らない。見ていない。」と言い通した。
おかげでこっちまで怒鳴られるはめになった。
結局本人達はすぐに認めていたらしく、2~3日後懲罰となった。7日間である。
食事のやりとりなど娑婆では当たり前のことなのだが、刑務所では力の
あるものが弱いものから取り上げてしまうことが頻繁に起こるので全て禁止されている。
私物のやり取りも勿論だめだ。