はじめての刑務所体験記

工場へ配役

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■ 配役審査会

配役の前日に配役審査会が開かれる。
出席するのは刑務所のおえらいさん達だ。
所長、副所長、処遇部長、各主席、各統括ら10名ほどだ。
そこに配役される受刑者が、一人づつ順に呼ばれる。
事件のことや、仕事のことなど様々な質問がされる上、わざと反発したくなるような事も言われたりする。
中には激しく怒鳴られている者もいた。
とにかく受刑者はプライドは捨てなければ刑務所ではやっていけない。
キャリア組みの刑務官の中には、明らかに若輩の奴もいるがどんなに生意気なことをいわれても我慢するしかないのだ。
一緒に審査会に行った中に一人気が弱いのがいて前の人が怒鳴られているのを廊下で聞いてかわいそうにブルブル震えていた。
とりあえず審査会を終わらせ舎房に戻った。


■ 洗濯工場へ配役

刑務所体験記 洗濯工場へ配役

配役になる前日に先日食事のやり取りをして懲罰になった二人が部屋に戻ってきた。
ひたすら迷惑かけたと謝っていた。
彼らは懲罰で一週間無駄にして、訓練が遅れてしまったので一緒に配役にはならなかった。
配役の日の朝食後、担当の刑務官が一人ずつ呼んで配役工場を告げた。
一人は内装工場、一人は紙折工場、私は洗濯工場だった。
この刑務所は、炊場、営繕、内装、洗濯、介助、図書などの経理工場が主で生産工場は紙折工場しかない。
M級(知的障害者)の世話をする為にA級がいるようなものだ。

荷物をまとめて、まず舎房の移動をする。
舎房は全て工場別になっていて、他の工場と一緒になることはない。
通路ですれ違っても他の工場と会話や挨拶をすることは禁じられている。
喧嘩になるのを避ける為だ。
舎房に荷物を置いてから洗濯工場に連れていかれた。


■ 洗濯工場の仕事

洗濯工場では受刑者の洗濯を全て行う。
受刑者は自分達で個別に洗濯することは禁じられている。
丸首シャツとパンツの事を略して「丸パン」と呼び、冬に着る厚手のシャツとズボン下を「メリヤス」と呼ぶ。
全ての刑務所での共通の呼び方だ。
丸パン、メリヤスの他、舎房着、工場着、長袖シャツ、チョッキ、靴下など様々な洗濯物が決められた日に出されるので、それを洗濯して返却する。

又、それぞれ官物と私物があるので、その管理をしなければならない。
衣類全てに各人の称呼番号をスタンプした片布(ヘンプ)と呼ばれる小さな布を縫いつけ、持ち主が判るようにする。
官物の衣類の修理もミシンを使って行う。
又、布団の打ち直しもしていて、一年に一度新しく打ち直した布団と交換してくれる。
結構色々なことをやっている工場だ。


■ 新人は特洗担当

ここは精神障害者の医療刑務所だ。
洗濯工場で一番影響があるのが、寝小便だ。中にはウンチを漏らす奴もいる。
普通の洗濯物と一緒に洗濯機にかけるわけにいかないので、別に分けて洗濯しなければならない。
これが「特洗」と言い、外にあるプールのような流しで長靴を履いて足で踏んで洗う。布団もそうだ。
新人は初めに必ずこの仕事をしなければならない。
とにかく嫌だったが、みなやってることだし拒否することはできないので諦めてやった。
一ヵ月後、新人が入ってきたのでやっと交代することができた。


■ 理髪係に転業

洗濯工場では、全受刑者の散髪とM級受刑者の髭剃りもやっていた。
工場に配役されて3ヶ月ほど経ったとき理髪係に転業になった。
散髪といっても髪型は基本的に坊主で、丸坊主の1型と上部だけ15mmに下部を刈り上げる2型があるだけだ。
電気バリカンで刈るのだが、1型なら1日、2型でも1週間もあればなんとか形がつくようになる。
多少失敗しても誰も文句は言えない。
散髪は特に問題ないが、M級の髭剃りは気を使う。
M級は自分でT字カミソリを使わせると危ないので理髪係りが剃ってやらなければならない。
ほとんどはおとなしく剃らせてくれるが、中には気に入らないと文句を言ったり暴れたりする奴がいる。
A級がそんなことをすれば即懲罰房行きだが、M級だと許される。
いちいち取りあっていてはきりがないのだ。

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